2007年ノルウェー発ハードロック。
ロニー・ル・テクロ(ギター)、ディーゼル・ダール(ドラム)、ヴィクター・ボルグ(ベース)、トニー・ミルズ(ボーカル)の4人編成ロックバンド。
モーティ・ブラック(b)が抜け、ついにはトニー・ハーネル(vo)までもが脱退し、いまやバンドの屋台骨を支えるオリジナル・メンバーはロニー・ル・テクロ(g)とディーゼル・ダール(Dr)という事態に直面したノルウェーのハードロックバンド、TNT。
特にこのトニー・ハーネルなくしてはTNTではないというほどの影響のある人事だったわけで、歌も当然、サビなどのソングライターとしても重要な役割を担っていた。ファンとしては、致命的であると思わないわけにはいかない。
しかし今回この新作「The New Territory」を聴いてみれば、その思いもかなり和らぐ。新しくシンガーとして迎えられたのはトニー・ハーネルと同じくらい長いキャリアをもつ英国人シンガートニー・ミルズ。ミルズは非常にハーネルと声質が似ていて、響きは当然違うものの、今までのハーネルが歌っていたカラーや雰囲気を損なわずに新生TNTとして生まれ変わったと前向きに受け入れられる一作。
オススメ度:☆☆☆☆
#1「ア・コンスティテューション」のエスニックで教会的な雰囲気はロニーらしいひねくれた曲作りが光る。ギターソロも変でリフも変。特徴的ながらオープニングには合っているみたいです。この曲を聴く限り、トニー・ミルズはトニー・ハーネルの声によく似通っていて声域も近く、見事に代役となっていると感じることが出来て、正直安心しました。ただ個性やパワフルさで言えばかなわないかもしれませんけれど。
#2「サブスティテュート」、この立ち上がりがとてもよい。じわりじわりとにじり寄ってくるイントロに刻み込むリズミカルなリフ。そのまま見事なハーモニーを交えたコーラスワークのサビへと流れるのが心地よい。そのあとのリフがまたかっこ良くて、素晴らしい一曲。TNTらしい一曲です。
#5「サムシング・スペシャル」、いかにもな'90年代的TNTを彷彿させる楽曲。
#6「ナウ・ウィア・トーキング」、刻むクールなリフとラップ調な歌唱が目立つ曲で、これがかっこ良過ぎる。ハーネル時代には無い味付けがここでもっとも引き出された形となった素晴らしいロックソングで、サビもバッキングもリフもソロもコーラスもノリもリズムも、どこから切ってもセンスの良さが滲んでくる、新生TNT時代を感じさせる代表曲となってもいいはずのくせになるナンバーです。
#7「ワイルド・ライフ」、これもいい曲なんだ、立て続けに良曲が並べられるこのアルバム、やっぱり大好きな一枚になりました。爽快感のあるポップナンバーですが、ギターのコードがしっかりと音楽を支えて彩っており、またソロにセンス溢れるリズムで、サビのあとのソロの後ちょいとテンションが変わるところなんて素晴らしい流れで、これはまたいい曲を作ったな、と正直思えます。
#9「ジューン」、ゆったりとしたバラード。こういう幅広な音楽を一枚のアルバムに収めているから色々な層のファンがいるんだろうし、逆にハードな面しか好きじゃない人には半端に思えるのかな、と思えなくもないですね。でもこれもTNTだ。
#10「2セカンズ・アウェイ」、これもまた個性の強い変でハードな曲で、妙なエフェクトを利かせたギターソロがこれまた癖になるんだよなぁ。不思議なもんです。変なコード展開で#1の次くらいに変。
#11「マイルストーン・リヴァー」、まさかここまで北欧メタル黄金期のようなバラードをしてくれるとは思ってもみなかった。'80年代のTNTを思い起こさせるのはこのバラードだけですが、これを歌うミルズに関して、本当にハーネルそっくりに歌いこなす人だな、と思える。この確かな力量だからこそロニー・ル・テクロが入ってほしいと思うほどものなんでしょうね。
#13「レッツ・パーティ・ミルズ」はミルズの自己紹介。これはiPodに入れなくていいや。しゃべってるだけだしな。
新生TNTの幕開けとなった新作は、これでまさしく音楽性も新境地へと踏み出した。
ハーネルがいないからといって、それでも前進しているこのTNTには未来があるのは確かであり、その軌跡の一枚となった本作は当然オススメの一枚。
せめて曲純さえ違えばもっと良かったのになあ、と思いました。オープニングナンバーはもうちょっと違うのにした方が、と。

